GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

SXSW2019 老舗リテーラーの進化:メイシーズ篇

Macy’s(メイシーズ)とは、アメリカの老舗百貨店です。18ヶ月前から始めた施策が話題を呼んでおり、その概要をSXSWのセミナーで取り上げられていたので、少しご紹介します。そのセミナーの名前は、Why Storytelling Sells: Platform Purchasing Power(ストーリーテリングが購買を促進する理由:プラットフォーム販売が持つ力)。

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Macy'sが登壇したセミナー
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MWC2019 GLOMO賞

毎年バルセロナで開催されるモバイルワールドコングレスでは、Glomo Awards(グローモー賞)の発表があります。Global Mobile Awards(グローバルモバイルアワード)を略して、GLOMO。可愛らしい名前ですね。

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Mobile World Congressウェブサイトより

ネットワークのインフラ、モバイルやウェアラブルのハードウェア、モバイルサービス等、モバイルに関係する様々なカテゴリーがあるのですが、その中から受賞者をいくつかご紹介します。

 

Best Mobile Service for the Connected Life/Best Mobile Innovation for Education

受賞者:Aira, Visual Interpreter for the Blind(アイラ、盲目の方への視覚的通訳者)

2つのカテゴリーで受賞したのがAiraという会社です。世の中が視覚的に拡張されていく中、目が見えない人でも拡張された世界を体験できるためのコネクテッドサービスです。盲目の人がスマートグラスをかけ、遠隔でその人の視点をリアルタイムで確認しているオペレーターが補助する、という仕組みです。周りの環境を説明したり、道の案内、カーサービスの呼び出し等を行い、全面に教育、職探し、勤務、育児、生活の5つのエリアをサポートします。

 

Best Mobile Video Content Service

受賞者:SK telecomのoksusu Social VR

SKテレコムとは、韓国最大の通信事業会社で、oksusuとは韓国で最も人気のビデオコンテンツプラットフォームです。今年のMWCで発表したのが、oksusuのソーシャルVRアプリ、「oksusu Social VR」です。Google Daydream、もしくはSamsung Gear VRを通して、遠く離れた友達と一緒にビデオコンテンツをバーチャルの空間の中で楽しめる、というもの。ユーザーはそれぞれアバターも持ち、空間の中で手を振ったり、ポップコーンを投げつけたり、紙飛行機を飛ばしたり、などのアクションをジェンスチャー認識テクノロジーを使って可能にしています。

 

Best Mobile VR or AR

受賞者:AccentureのAVEnueS

AVEnueSとは、Accenture Virtual Experience Solutionの略であり、Accentureが取り組んでいるVRを通してのトレーニングソリューションです。上記のビデオは社会福祉職員が直面するであろう児童虐待の家庭調査をVRで体験できる、というものです。児童虐待という複雑な状況を正しく精査するのには長年の経験が必要、と言われている中、VRのような没入型の教育手法がとても効果的なようです。

 

その他のGLOMO受賞者はこちらから!

MWC2019 ARゲームの先駆者Niantic Inc.

Niantic(ナイアンティック)という企業をご存知でしょうか。では、Pokemon GOはどうでしょう。Nianticは、任天堂Pokemon GOを共同開発し、一般消費者にARを普及させた、と言っても過言ではない、ARテクノロジー企業です。そのNianticの創設者であり、CEOのジョン・ハンケ氏が登壇したキーノートセミナーの内容を少しご紹介します。

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Niantic Inc.の 創設者ジョン・ハンケ氏のキーノート

Nianticは、もともとデジタル上で地図を作成すべく、2001年にKeyholeというベンチャー企業として産声をあげています。いずれGoogleに買収され、Google Map、Google Earthの開発へ。(毎日当たり前のように使うGoogle Mapを作ってくれたジョンに感謝!)緻密な地球の地図を世界中の人々の手元へ届けた後、次に何ができるだろうか、と思い、2015年にGoogleから独立し、Niantic Inc.としての活動を開始します。

Niantic Inc.は3つの価値観を基盤に成り立っております。

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Nianticの3つの価値

Exploration <発見>

家族や友達と一緒に冒険できるようなプロダクトを開発したかったこと。どの町にも発見や冒険が待ち受けている、という考えから生まれています。

→ ゲームのユーザーを通して、今までで何億という場所が発見され、共有されています。

Exercise  <運動>

発達している地域こそ、運動不足が問題となっています。歩く、という簡単な行為を促進したかった、という考えから生まれています。

→ ゲームを通して、全ユーザーにより230億キロ歩かれています。

Social <実社会でのつながり>

ソーシャルという言葉を聞くと、必然的にデジタルを思ってしまいますが、Nianticが促進したいソーシャルとは、実社会でのFace to Faceの対話となります。

Nianticが世界各国で開催しているゲームイベントの参加人数は去年の1年間だけで300万人以上と言われています。

 

Nianticが一番最初に開発したIngress(イングレス)というゲームは2500万ダウンロードされており、ARゲームで世界2位の人気を誇っています。そして、その次に開発したPokemon GOは、今で約10億ダウンロードされ、その人気は未だ拡大し続けております。そして、今年、ハリーポッターファンも大注目のHarry PotterのARゲームが公開されます。

 

ARを通して、世界にワクワクを与えているNianticの5Gへの期待は?

Nianticがやりたいことを実現するには、4Gのネットワークでは限界を感じている、とハンケ氏。5Gが実現できたとき、Nianticが創造している3つのことが実現できると考えます。

1. AR Cloud

AR Cloudとは、地球上の環境をすべてマッピングし、人間のため、ではなく、人間が操作するデバイスのためのAR地図を作る、ということ。いわゆる、「地球規模のAR」です。これが実現できたとき、実際の世界にありとあらゆる拡張現実を重ねることが可能となります。Niantic Real World Platformとして、開発途中ですが、これを実現するには、5Gのような処理スピードが必要不可欠となります。

2. ライブイベント

Niantic3つの価値の1つである「実社会でのつながり」を実現しているライブイベントでも5Gは重要となってきます。時には10万人以上が参加するイベントでは、みんながスマホを片手にゲームに参加するものとなります。集中した場所で、何万人以上の端末を稼働させるには、さすがに4Gでは圧迫されている、とのこと。

3. 低遅延

Latency(レイテンシー)という言葉は今年のMWCでよく耳にするのですが、いわゆるネットワークの遅延のことで、5Gになったとき、その遅延が低くなる、ということです。その遅延は1ミリ秒以下となります。どれくらい早くなるのか、というと、説明できないですが、今の4Gだと大体10ミリ秒と言われています...。遅延が少ない、ということは正確な動きを瞬時に伝えられる、ということですが、各業種がこの低遅延に注目しています。ではゲーム上で、どのような意味を持っているのでしょうか。全員が参加しているARゲームだった場合、各プレイヤーやゲーム上のARの動きをすべてトラッキングしている中、何か/誰かがすばやい動きをした場合、その動きについていけないこととなります。

Codename NEONというデモゲームの映像とともに紹介されました。

低遅延によって、このようなリアルタイムで同じAR空間を共有できるマルチプレイヤーのゲームを実現することができます。

 

ジョン・ハンケ氏の締め言葉

未来とは、実世界での多く、もしくは全ての体験がデジタルなインタラクション、インターフェイス、情報、エンターテインメントによって、拡張されたものとなります。このような規模の変化は10年、または数10年に一回訪れるかどうか、というものです。マイクロコンピューターの誕生を幼い頃に体験し、Googleではクラウドの誕生を目の当たりにし、スマホの普及に参加しました。そんな僕から見るARへの移り変わりは、今まで見た変化に値する変化と思います。

MWC2019 MasterCardのデジタル改革

テクノロジーによって多くの業種や企業がDISRUPT(破壊)されている今、時代に取り残されないようにと、それぞれの組織はDIGITAL TRANSFORMATION(デジタル改革)を起こそうと、大忙し!

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5G、AI、IoT、Big Data, oh my!

今年1月、ラスベガスで開催されたCESでは、デジタルに適応するため、ブランドロゴのアイコン化を発表し、DIGITAL TRANSFORMATIONの真っ只中のMasterCardが「デジタル改革を通して顧客体験を再構築する」というセミナーに登壇しており、MasterCardがデジタル改革を行う上で大事にしている4つのフィルターについて話しておりましたので、ご紹介します。

 

1.  Are we making consumers' lives easier?

消費者の生活をより便利にしているのか。MasterCardのスピーカー自身も「ありきたりで失敬」と言っていましたが、結局は何ごとも消費者が中心となります。が、この「より便利」を気にする中で、忘れてしまいがちなことが。それが次のフィルターとなります。

2. Are we giving consumers a peace of mind?
消費者に安心を与えているか。1番目のフィルターで消費者の生活を便利にするゆえ、消費者が不安に感じる「ある一線」を超えていないか、どうか。MWCに参加するような人々と、一般消費者には大きなギャップがあります。IoT、AI、5Gなどと、日頃考えてはいない消費者に、今のスピード感で発展するテクノロジーを投げつけると、自然と不安になりますよね。ここで重要なのは、消費者に信頼してもらえているかどうか、ということ。透明性、という言葉は使われすぎていますが、透明生を持って消費者と接していないと、いずれ腹の奥に潜めている裏の目的が暴かれ…ま、良い結末には至らないですね。

3. Partnerships in line with your Values

たった1つの企業ではデジタルイノベーションは実現しません。デジタルイノベーションはモバイル上、アプリ、ブラウザ、デバイス等で起こる以上、パートナーシップは今の時代、必要不可欠なのです。MasterCardのパートナーシップの1つの事例をご紹介します。

 

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MasterCardウェブサイトより:QRコードスマホを利用した電気料金の支払い

去年のMWCでMasterCardはM-KOPAというケニアの太陽発電会社とのパートナーシップを発表しました。このパートナーシップを通して、東アフリカの地域で電気へのアクセスがない人々に太陽光パネルを提供し、モバイルを通しての支払いを可能にしました。太陽光パネルを簡単に購入することはできませんが、モバイルを通して、電気が必要なときに少しずつ支払いを重ね、約1年で太陽光パネル自体の支払いは完了できるようになっています。また、今まで金融機関と無縁だった人々が、MasterCardの支払いを通して蓄積されるのが「信用情報」。その信用情報を使って、生活で必要なものを手に入れるためのローンを組めるようにしています。

4. Give Consumers Back Control

デジタルが進む中、自分のクレジットカード情報がどこに存在するか、皆さん一覧にできますか?多くの人はできないと思います。MasterCardが実現しようとしているのは、消費者に自分のクレジットカード情報がどこに存在しているのか、またその情報を透明性を持って提示し、削除できるようにすること。

 

今年のMWCでのMasterCardの発表

デジタルが進む中、ショッピングはよりシームレスになっていきます。ボタンをクリックだけで、なんでも購入する時代です。音声デバイスが普及するにつれ、ボタンすらいらず、言葉に発するだけでモノを購入することが可能となりました。ショッピングはシームレスであるべきだが、隠されてはいけない、とMasterCardの人は語っていました。そこで、音声でのコミュニケーション、取引が進む時代に向けて、MasterCardはSonic Brand(音響ブランド)を発表しました。

サウンドロゴと言ってしまえば、サウンドロゴですが、誰でも認識できるサウンドロゴを持っていないブランドであれば、今後、音声での対話が増える中、ブランドを認識できる「音・声」を言及する必要がありますね。

MWC2019 5G時代のコンテンツ

Mobile World Congress、発動しました!

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今年のテーマは、Intelligent Connectivity

今年の一番の話題はなんと言っても5Gです。しかし、5Gによって広告業界、エンターテインメント業界はどう変化していくのでしょう。

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「素晴らしい顧客体験を創造するビジネス」というトピックのセミナーに登壇したのはRYOTというVerizonのコンテンツスタジオ

先週、アメリカのビジネス誌Fast Companyが発表した「World’s Most Innovative Companies(世界で最も革新的な企業たち)」の50社の中の1社に選ばれたRYOTというVerizonのImmersive Entertainment Studio(没入型エンタメスタジオ)が登壇するセミナーに参加してみました。

 

RYOTが「革新的な企業」の1社に呼ばれる理由とは?

去年の9月にイノベーションスタジオをロサンザエルスにオープンし、最先端のテクノロジーを使って、5G時代へ向けた次世代コンテンツの制作に本格的に取り組んでいる、ということから、選出されたようです。

 

5G!5G!5G!と騒がれている中、実際、世の中はどう変化するのでしょうか。

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5Gの発展

1G <VOICE>:人々は通話を通して、つながりを持ち始めた

2G <TEXT>:メールの発展により、人と人のコミュニケーションを変えた

3G <DATA>:ソーシャルメディアの誕生により、社会の中での人との関わり方を変えた

4G <VIDEO>:動画の爆発により、ビデオ、エンターテインメントを変えた

5G <POST-SMARTPHONE ERA>:ポストスマホ時代へ

 

5Gが世の中に一般的に浸透するにはまだ何年か先、と言われている中、そんなのはあっという間の期間であり、今から5Gの世界を考えながら準備するのが必須である、とRYOTのMark Mellingさんは話しておりました。

 

そこで、RYOTが5Gを考える上で大切にしている5つの行動規範をご紹介します。

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RYOTが考える5Gへ向けた5つの行動規範

1. Understand the Tech

組織全体が5Gというテクノロジーを理解し、自分の組織にどういった変化をもたらすのか、考えること。

2. Forcast the Impact

自分の業界だけでなく、他の業種にどのようなインパクトを与えるのかを考えること。また、その変化により、自分たちにどのようなチャンスがあるのかを考えること。

3. Distinguish between Connectivity vs Capabitlity

コネクティビティを提唱するのではなく、コネクティビティがもたらすケイパビリティのことを考えること。5Gの一般導入がまだ先だったとしても、今、RYOTができることは何か、と考えたとき、狭い範囲でなら5Gを導入することができると思い、5G環境のスタジオを作り、5Gで可能となるコンテンツ制作に挑んでいる。

4. Experiment with the Present

生き残るためには、現在、すでに存在するテクノロジーを利用し続けること。必ずしも全てが5Gである必要はなく、その場に適したテクノロジーを利用することが鍵です。

5. Experiment with the Future

4番に比べて、生き残るためではなく、成長してくためには新しいテクノロジーに率先して挑んでいくこと。今まででデジタルは2Dのものであったが、人間そのものは3Dの生き物である。未だにライブストリームではなく、実際にコンサート会場やスポーツ観戦、MWCのようなカンファレンスに足を運ぶ理由はそこにある。コンテンツは2Dに納まらず、今後もっとImmersive(没入型)になっていく。その考えをコンテンツに落とし込んだ事例として紹介されたのが「Terminal 3」というインタラクティブなAR体験です。

「Terminal 3」は、体験者がアメリカの入国管理局の職員となり、Hololensを通してホログラムとして登場するイスラム圏からの旅行者に様々な質問をし、入国させるか否か、決断させる、という複雑な政治問題を題材にしたコンテンツです。質問を通して、旅行者との会話が進むにつれ、モヤモヤだったホログラムが少しずつはっきりとなっていき、その人がリアルになっていく様子を描いていく。

 

今後、このようなImmersive Storytellingが増えていく、と予想されます。