GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

カンヌセミナー2018 Day2&3 ダイバーシティ

ここ数年、カンヌのセミナーでよくテーマにあがるのが、ダイバーシティ

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Vogue UKのホームページより

 

今年もそこは変わらず、

2日目はヒューレット・パッカード(HP)

3日目はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)

と2つのグローバルブランドがカンヌのメインステージでダイバーシティについて語った。

 

ダイバーシティとは多様性のことを指すのですが、男女平等だけでなく、人種、民族、性的指向の多様性のことを指します。

 

HPのセミナーに登壇したのは、HPのChief Marketing OfficerであるAntonio Lucio、Thandie Newton(イギリスの女優)、Edward Enninful(British Vogueの編集長)、Tiffany R. Warren(Omnicom GroupのSVP、Chief Diversity Officer)。

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司会のAntonio以外の3名は黒人であり、この3名がどう逆境を乗り越えて、成功を収めたか、というパネルディスカッションが繰り広げられました。

 

Thandie Newton:

今年公開された映画「Solo: A Star Wars Story」でメインキャラクターを演じている。40年以上の歴史を持つスターウォーズフランチャイズで、初めて、黒人女性がメインキャラクターとして登場する。

 

Edward Enninful:

British Vogue初の黒人編集長として、去年の秋に就任し、多様性を象徴する表紙で話題を呼んでいる。

 

Tiffany R. Warren:

Omnicomの役員でありながら、クリエイティブ業界での多様性を促進する団体ADCOLORの創設者でもある。

 

白人男性が圧倒的に多い広告業界にとってダイバーシティとは大きな課題ではあるが、カンヌで聞き飽きた言葉でもある。5年前、FacebookのSheryl Sandbergが力強く男女平等をカンヌのセミナーで訴え、会場から拍手喝采されているのを覚えています。しかし、それから5年後、果たして何か改善されたのか?

 

今年のカンヌで見受けられるのが、もうキレイごとではなく、アクションへとつなげよう、という動きです。それは広告業界だけでなく、去年から活性化された#metoo、Times Upなどのムーブメントからも見受けられます。

 

AWARENESS から ACTION へ

 

マーケティング的に言うと、ここ数年でAWARNESSは十分できたので、次は本格的にACTIONとなります。そのACTIONをいち早く実施したことで評価されているのがこのセミナーの主催者であるHPです。

 

HPのCMO曰く、クリエイティブ業界でダイバーシティを育むには、業界全体を変えて行く必要がある、と言う。それは、クライアント、エージェンシー、プロダクションと、すべてのレイヤーでダイバーシティが根付いていないと、意味がない、という。

 

HPがとったACTION

クライアント側:HPの役員クラスの女性の割合を2割から5割へ

エージェンシー側:HPのアカウントで、クリエイティブのトップとして働く女性は1人もいなかったのに対し、1年で女性の割合を5割以上へ

プロダクション側:今までHPのグローバルキャンペーンをディレクションした女性監督は1人もいなかったのに対し、今はHPのグローバルキャンペーンの59%は女性監督がディレクションしている

 

HPのACTIONからの成果

- ブランドの選好度が26%伸びた

- 収益が33%伸びた

 

 

HPの登壇者が黒人でしたが、P&Gのセミナーの登壇者は、司会のP&GのChief Brand OfficerであるMarc Pritchard以外は、皆女性でした。

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Madonna Badger:

クリエイティブエージェンシーBadger and Wintersの創設者/CCOである。広告内で女性を客観化したり、蔑んでいたりする広告を告発するWomen Not Objectsという非営利団体を設立。

 

Queen Latifah

楽家、女優、作家、起業家。ヒップホップ界では女性のパイオニアと言われている。

 

Katie Couric:

ジャーナリストであり、夜のニュースで初めての単独女性キャスター。

 

P&GのMarc Pritchard曰く、男女平等への道のりはまだまだ遠い。

40,000本の広告を調査したところ、うち29%は女性をネガティブな描き方をしている。その理由とは、

- Chief Marketing Officerの32%が女性

- Chief Creative Officerの33%が女性

- 制作のたった10%が女性

HPと同じく、クライアント・エージェンシー・プロダクションという全部のパイプラインを変えないと、多様化や平等は実現できない、と話す。

 

では、5年後、ダイバーシティがカンヌのトピックとして取り上げなくても良くなるには、次の5つのステップが必要。

① ASPIRE CHANGE:変化を熱望する

② JOIN THE MOVEMENT:ムーブメントに参加する

③ BUILD THE PIPELINE:多様化のパイブラインを作る

④ FUEL THE PIPELINE:教育とメンターシップを通してパイプラインを強化する

⑤ SHARE THE SUCCESS:成功を共有する

 

毎年テーマに上がるダイバーシティですが、やっと各企業/ブランドが責任をもってACTIONへとつなげる、という段階へとたどり着いた、と感じる今年のカンヌでしたー。