GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

アドウィーク・エクスペリエンシャル・アワード 受賞作品

日本では「令和」の幕開けでお祝いムードの中、ニューヨークでは5月1日、今年開設されたばかりの新品ホヤホヤのアドウィーク・エクスペリエンシャル・アワードの受賞式が行われ、受賞者たちがお祝いされていました。

 

エクスペリエンシャル:体験型

この言葉はここ近年の流行語ですね。

 

2018年に発表されたevent maketerのレポートによると

85%の消費者:「イベントやエクスペリエンスを体験することによって、購買へとつながる可能性が高まる」

91%の消費者:「イベントやエクスペリエンスを体験することによって、ブランドに対しての好感が増した」

 

そんな、消費者のハートを釘付けにする優れた体験型ブランドマーケティングに注目した賞がアドウィーク・エクスペリエンシャル・アワードです。受賞作品をいくつか、ご紹介いたします。

Havana Club 「THE AMPARO EXPERIECNE」

バカルディのラムブランドHavana Clubによるインタラクティブな舞台体験です。ブランドの誕生から、キューバ政府による工場の差し押さえ、様々な苦難を乗り越えたブランドストーリーを本格的な舞台脚本家と監督、演者たちによって、蘇らせたブランドエクスピリエンスとなります。ただの舞台ではなく、観客が舞台の中に入り込むインタラクティブなものとなっているので、没入感満載!6人のキャラクターが案内人となり、セレクトするチケット、どのキャラクターの物語を聞くかによって、物語の視点が変わるのも楽しそうなものとなっております。

ニューヨークとマイアミの2つの都市でバーテンダーと一般消費者に向けて公演を開き、その成功によって、マイアミでの2ヶ月間の滞在公演も決定。バーテンダーの9割は、Havana Clubを購入する、と体験後に答えており、その結果が体験のインパクトを物語っています。ちなみに、体験するのに1枚のチケットが約$120以上で売られており、その価格も本格的っ!

 

The Payless Experiment(Paylessによる実験)

Paylessとは、アメリカに存在する靴屋さんです。Paylessを直訳すると<支払いを少なく>という意味で、まさに「格安」を謳い文句にした靴屋さん。去年のホリデイシーズンに向けて、Paylessが行なったのは、インフルエンサー向けの販売イベント。ただ、イベントはPaylessとしてではなく、Palessi(パレッシィ)とまるでイタリアの高級ブランドの響きのある偽物ブランドを作りあげ、ファッションインフルエンサーを呼んでの販売イベント。高級感漂う店舗に並ぶのは、通常$20、$35と格安で販売されているPaylessの靴たち。ただ、何も知らないインフルエンサーたちは「エレガント!」「ハイクオリティ!」と豪語し、10倍以上の価格を支払って満足している様子が全米のメディアで報道されました。インフルエンサーを騙す様が話題になったとともに、インフルエンサーが高値で購入した靴がこの格安価格で購入できる、ということで、各店舗での売り上げアップに成功したものとなります。

 

Tenessee Viewfinders for the Colorblind(色盲者へ向けた観光双眼鏡)

色鮮やかな紅葉で有名なテネシー州なのですが、色盲の方にはその壮大さを体験できないことを解決したテネシー州観光協会の施策となります。テネシーの観光名所にEnchroma社の色覚補正レンズを入れた観光双眼鏡を設置し、色盲の方にも色彩豊かなテネシーを体感してもらうことに成功。なんと言っても初めて色を体感する表情にグッとくるムービーとなっており、皆さま、ティッシュのご用意を。

 

Berlin Philharmonic×WWF 「Insect Concerto(虫協奏曲)」

世界各地で昆虫が劇的な勢いで減少していること、ご存知でしょうか。気候変動、生息地破壊等が理由にありますが、虫の減少により、大きく生態系が変わり、私たちの生活に多大なる影響受けることになります。しかし、虫には自らこの事態について訴えることができない...。そこで、考えられたのが、「虫へ声を与える」というベルリンフィルハーモニー管弦楽団WWFの共同プロジェクト。名門オーケストラとコオロギの合唱団による特別楽曲を作曲し、コンサートで演奏するとともに、オンラインで販売。すべての売り上げはWWFへと寄付されます。ただコオロギの音色を録音して、オーケストラとの曲へと組み合わせたのではなく、コオロギの鳴き声を促進させる音を楽曲の中へと取り込み、本当に一緒に演奏する、ということを実現した。

 

Bombay Sapphire 「Art in Progress(アート中)」

「アウトドアメディアの使い方が素晴らしいで賞」を受賞したのがジンブランドのBombay Sapphireです。ニューヨークは世界で最も有名な都市ですが、工事現場が多い都市でも知られています。工事中の象徴となっている緑の壁はマンハッタンの街並みに溶け込むほど、町の一部となっています。が、その緑の壁、そんなに美しくない、ということで考えたのが「工事中」ではなく「アート中」。様々なアーティストへ作品をお願いし、緑の壁をアート作品へとすり替え、地域の街並みを美しくしたとともに、ブランドビジョンであるStir Creativity(クリエイティビティをかき回す)という考えを広めました。

 

「エクスペリエンス」と言っても、本当に様々な形態がありますね。