GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

カンヌセミナー2019 Day4

カンヌ4日目!カンヌの折り返し地点を迎え、「あれ、疲れてるかも!?」と自問自答しはじめている、児玉です。

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授賞式終わり。レッドカーペットはワチャワチャ状態

 今年はクライアント/ブランドのセミナーがいつもより多いと感じるのは私の気のせいでしょうか...?本日、登壇していたのは、グミのHARIBO、LEGO、Guiness、Dunkin' (Donuts)などと、グローバルブランドが目白押し。そんなセミナーの中からいくつか、ご紹介を! 

Will in-housing creative fail?  (クリエイティブのインハウジングは失敗するのか?)

本日、最もヒートアップしていたセミナーの1つとなったのが、インハウスクリエイティブについてのディベートです。エージェンシー側から2名、ブランドのインハウスクリエイティブチームから2名。数年前から、クライアント内にクリエイティブチームを作り、エージェンシーにお願いしているクリエイティブワークを社内で完結する流れが始まっています。つい先日、P&GでもSecretという女性制汗剤ブランドのクリエイティブをすべてWeiden + Kennedyから引き上げ、社内で行う、と発表しました。

 

エージェンシー側の言い分「もちろん失敗する」

- 広告は、世間へ向けた会話であり、それを成立させるには広く、客観的な視点が必要であり、社内でそれが成立できるとは思えない。

- 多種多様な経験を持つ、多種多様な人が集まるエージェンシーにお願いするのが一番。

- 社内だけだと、生ぬるくなりがちであり、良いクリエイティブを作り上げるには、優れた才能・多様性・緊張感。

 

インハウス・エージェンシー側の言い分「きちんとやれば、もちろん成功する」

- インハウスだと、商品やブランドに対しての深い知識と忠誠心がある

- 決断権のある人と直接話をして、ビジネスにインパクトを与えることができる。

- 多様性や才能が必要ならば、外部から採用をして、インハウスチームを作り上げることができる

- インハウスだと、自分ごと化、実際に自分の給料に反映される、という頑張るインセンティブがある

 

ディベートで一番拍手が起こったのは、以下のインハウス側の発言

インハウスの仕事は、エージェンシーの仕事を奪うことではなく、エージェンシーと一緒により良いクリエイティブを作っていくこと

結局はそこまで競争関係にない、ということですかね...。

最後、会場内でアンケートをとったところ、以下の結果となりました。

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失敗する:39%、失敗しない:56%、もしかしたら...:5%

おめでとう!インハウス!

 

RELEVANCE(レレバンス)

今年のカンヌで開かれたセミナーでもっとも口にされた言葉を数えたら、RELEVANCE(レレバンス)はトップ10に入るのではないでしょうか。最近はじまった概念ではなく、ブランドはどの時代もRELEVANCE(レレバンス)を追い求めていると思うのですが、ブランドと商品数が無限にあり、消費者は世の中にあるブランドの8割がこの世から消えようと、どうでも良い、と思っているこのご時世、RELEVANCE(レレバンス)とはとても重要なこと。

そして、毎回悩ませられるRELEVANCEの和訳...。

RELEVANCE(レレバンス)の意味:関わり、関連、つながり

マーケティングで言うと、消費者がブランドと関わりがあると思え、「自分ごと化」できているかどうか、でしょうか。

そのRELEVANCEの獲得を求め、本日登壇した4つのブランドは以下のように考えています。

 

 HARIBO(ハリボ)

理解してもらえる前に、理解をしなくてはならない。

 ヘルウィグ・ベネケンズ(HARIBO, Global Marketing Director)

どの素晴らしいブランド、どの素晴らしい広告は、消費者のインサイトに根付いている、と発言していたヘルウィグさん。

本当に良いインサイトは、データではなく、直接消費者と話すことから生まれた、と今週受けたセミナーで何回か耳にしました。

Hariboでは、消費者と直接触れ合う機会として、80年以上、毎年秋に続けいてるイベントがあります。それは、「栗&どんぐり引き換えキャンペーン」!子供たちが集めた栗とどんぐりをお菓子に引き換えしてくれる、というもので、多くの栗とどんぐりを持った子どもたちが長蛇の列となって、1年に1度Haribo本社前に現れる、とのことです。

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<両替レート>1栗=1スイーツ / 5どんぐり=1スイーツ


LEGO(レゴ)←読み仮名いらないですね。と言いながら入れる...

レゴがRELEVANCEを保つために行なっていることとは、DNAに埋め込まれているブランドパーパスに基づいた4つのアクションです。

 

LEGO のブランドパーパス:

To inspire and develop builders of tomorrow

未来を組み立てる子供たちをインスパイアし、形成づけること

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ジュリア・ゴールディン(Global Chief Marketing Officer, LEGO Group)

ブランドパーパスに基づき、RELEVANCEを保ち続けるのに、4つのアクションを行なっている。

 

1. すべての子どもが遊べるための権利を守り、遊びを促進する

事例)目の見えない子どもたちのために作った「点字レゴ」

 

2. 変化を受け入れ、改革する

事例)レゴとARを組み合わせたHidden Sideという新しい遊び方。(デジタルからフィジカルへと遊びの中で自由にシフトする今どきの子どもたちを見て生まれたもの)

 

3. 自分たちの価値観に共感し、愛してくれる人たちと手を組む

事例)イギリスから始まり、今では数カ国で放映されているLEGO MASTERSというレゴスキルを競い会うテレビ番組。(子ども、大人、男女関係なく、レゴに真剣に取り組んでいる人たちの姿を見ると、レゴってすごいなーと思いますね)

 

4. 子どもたちと、子どもたちの地球を守る

-2030年までにパッケージングと商品をすべて持続可能な素材で生産する

-2025年までにパッケージングはすべて持続可能な素材で生産する

と去年の4月に宣言しています。

 

GUINESS(ギネス) 

260年の歴史を持つギネスのセミナーでは、「Can a brand live forever?(永遠とブランドは生き続けられるのか)」というテーマで、ギネスで守り続けている4つの揺るぎない信念が紹介されました。

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4つの揺るぎない信念

1. ブランドパーパスが道しるべである

ギネスのブランドパーパスは創設からPOWER・GOODNESS・COMMUNIONです。

POWER:パワー/力

GOODNESS:良さ

COMMUNION:交流

ブランド創設から、パーパスは変わっていないのですが、そのパーパスが持つ意味は時代とともに、少しずつ変わってきています。

POWER:腕力などの物理的な強さ → 信念を貫き通すという精神的な強さ

GOODNESS:商品の味の良さ → 社会への貢献(ソーシャル・グッド)

COMMUNION:パブで交流を深める → 多種多様な人と共に立ち上がる

2. 信念は大胆に貫く

3. 良い方向へ改革する

4. 深い地域とのつながり

世界中に展開されているギネスですが、市場によってコミュニケーションを調整しております。韓国の市場に登場して、わずか10年ですが、韓国では、裕福な若い女性層をターゲットに、「なめらかで贅沢な泡」という切り口でコミュニケーションをし、大成功を納めております。

上記の動画は、事前に南アフリカ市場用に作った動画「MADE OF BLACK」を韓国用に微調整したものです。「MADE OF BLACK」は私のお気に入りCMなので、ご紹介!

で、結局「永遠とブランドは生き続けられるのか?」

短期・中期・長期の戦略がすべて備えていることが大事であり、目先の利益に囚われすぎて、長期に投資できないブランドは長続きしない、という話のあと、セミナーの一番最後にギネスの代表的、かつ伝説的なCMを流されて、お・し・ま・い。絶対スベらない作品があると、強いですね。

Good things come to those who wait;待つ者へは幸福がやってくる

 

Dunkin'(ダンキン "ドーナッツ")

ダンキンドーナッツとは、アメリカで愛されているコーヒーとドーナッツ屋さんです。が、去年の秋、大きなブランド改革を起こしました。68年間、「ダンキンドーナッツ」として親しまれたブランド名から、「ドーナッツ」をなくし、「ダンキン」だけにする、と発表。

理由は、ドーナッツの売れ行きが下降しているのと、コーヒー市場が順調なのにあやかり、コーヒーブランドとしての立ち位置を確保するため。その新しい名前とロゴ、汎用性あるデザイン、改名の発表の仕方が素晴らしく、今年のカンヌデザイン部門ではブロンズライオンズを受賞。

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ダンキンドーナッツ”からただの"ダンキン”へ

改名の発表はTwitterで行われました。大げさではなく、「68年間付き合ってきて、これからは下の名前で呼んで❤️」と愛らしいものでした。

68年間、根強いファンのいるダンキンからしてみると、一番怖かったのがファンのリアクションだったようですが、受け入れてもらったようで、かつ、ビジネス的にも大成功!

- QSR誌「2018年もっとも改革したブランド」

- 消費者の購入意思が28%上昇
- ブランド価値が73%上昇

 

 このセミナーの一番最後に出て来た言葉が結構心に残りました。

カンヌ限定ロゼを作って持って来ましたので、会場を出る時に受け取りください

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カンヌ仕様、限定カンヌ・ロゼ!

ではなく!

The brand belongs not to the company, but the consumer.

ブランドは企業のものではなく、消費者のものである

今年のカンヌをいい具合にまとめている1文だな、と思いながら、4日目のブログを閉じさせていただきます。

 

ボンヌイ〜