GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

カンヌセミナー2017 Day1B面

カンヌライオンズの初日といえば、ライオンズヘルスの初日でもあります。

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いくつか、ヘルスのセミナーを受けてみたのですが、1つ浮かび上がった言葉が

HUMAN CENTRIC(人を中心に考える)

ヘルス業界では、どうしても医学的な用語で多く、コミュニケーションが固くなりがちで、わかりづらい。また、消費者をひとりの「人」として見るのではなく、「患者」として見てしまう。なので、ターゲットを考えるとき「糖尿病を患っている患者」「血糖値の高い患者」として考えてしまいがち。

 

しかし、多くの人を自分を「患者・病人」として思ってはいない。自分のことを話すとき、「広告会社のプロデューサーです」「2人の子供の母親です」など、社会での役割を伝えるかもしれないが、「心臓病の患者です」という人はまず、いない。というのも、人は社会で役に立っていないと思う名称で自分を紹介することはない。なので、ターゲットと思う、「糖尿病患者」にコミュニケーションしても、その人は自分の周りをキョロキョロして、「えっ僕のこと?」と思い、共感ができない、とのこと。

 

ま、Human Centricというコンセプトは今に始まったことではなく、人へコミュニケーションをする中で、Human Centricであるのは大前提ですが、より深いつながりを構築するのを目指しているブランドにとって、感情を動かすコミュニケーション、すなわち、共感を呼ぶための「人を中心としたコミュニケーション」が近年、増えています。

 

初日に受けた2つ別々のセミナーで、そこに共通点が。どちらも好感度が最悪だったブランドの持ち返しキャンペーンに使われたのが、「人間を中心にした」コミュニケーション。

ファイザー(アメリカの大手製薬会社)

アメリカ国民にとって、製薬会社はどれも同じに見える。しかも、「人のことより金儲けを重視している業界」と思っている人がなんと75%!その悲惨なイメージを払拭するために行ったのが、10年以上ぶりのブランドキャンペーンである「Driven to Discover a Cure(治療を発見するのに一生懸命)」

出演しているのは、世の中のためになる薬を開発している本物のファイザー研究員たち。金のことばかり考えていると思われている企業を人間らしく、描いております。またウェブサイトでは、研究員たちのドキュメンタリー、なぜファイザーの研究員になったのか、などのコンテンツを掲載しております。あと、ソーシャルメディアツイッターフェースブック、インスタグラム)でも、メッセージを押し出し、結果として、ファイザーに対してのイメージが変わった、という人が47%。大きな成功を収めた。

 

AIBアイルランド銀行)

国民の信用を失ったアイルランド銀行(セミナーでは自分たちは最も嫌われていたブランドとまで)が行ったのは、スポンサーしていたゲーリック・フットボールアイルランドの国民的スポーツ)のチャンピオンシップのリブランディング。GAA Club Championshipという大会(すみません!ただでさえスポーツに詳しくないのに、ゲーリックなんとか、というスポーツも聞いたことない...)を盛り上げるために選手を中心に描いた#TheToughest(もっともタフ)というキャンペーンを開始。

#TheToughestとは、ゲイリック・フットボール界でも勝ち抜くのがもっとも大変と言われているGAA Club Championshipのことと、それに挑んでいる選手たちが世界のアスリートの中でももっともタフである、という2つをかけた意味になっています。

限られた予算の中で、大会と、それに参加する選手たちの魅力を伝えた。

上記のムービーのようにロッカールームにカメラを置き、試合前の熱気を伝えたり、あまりにも関心の薄かった大会のため、テレビでの放映もない、ということで、自分たちで試合会場にカメラを持ち込んでYouTubeライブストリーミングをしたり、選手がいかに世界レベルのアスリートかを伝えるために違うスポーツのプロチームへの派遣する、というドキュメンタリーを制作したり(下記のムービーはその予告編)。

アイルランド国民の関心のあるスポーツに、共感できるヒューマンストーリーを全面に押し出したコミュニケーションで国民の信頼を取り戻したAIB銀行。信頼を取り戻せたことをきっかけに、やっと自分たちのことを語れる権利を勝ち取ったと思い、商品広告も制作するようになったのだが、そこで面白いのが、自分たちの広告でも、役者ではなく、実在の消費者、リアルな人を起用して制作する、というのを約束事にしている。

 

BULLSHIT METER(それヤラセだろっ!と思うアンテナ)が敏感になっている消費者に誠意をもって、偽りのない姿を見せる、というのがブランドに求められている時代であり、リアルが持つパワーは凄まじい、と感じる1日に。

使われすぎてて、使いたくない言葉ですが、AUTHENTICITYに敵うものはない、ということですかね。