GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

カンヌセミナー2019 Day2

カンヌ2日目!昔はフランスの店員に「マドモワゼル」と呼ばれていたのが、今は「マダム」としか呼ばれなくなったことに少し寂しさを感じる、児玉です。

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本日の目玉:Droga5とAccenture Interactiveのセミナーはほぼ満席!

そんなことはさておき、2日目のセミナーをざっくりとご紹介!

Political Activism(政治運動)

本日参加した2つのセミナーでテーマになっていたのが、Political Activism(ポリティカル・アクティビズム)です。辞書で調べると、日本語では「政治運動」という意味らしいのですが、この場合、「ブランドが世の中をより良い場所へと変えようと積極的に社会活動、政治活動へと参加する様」といったところでしょうか。

このテーマは今はじまったことではないのですが、少しずつ姿を変えているように感じます。2年前のカンヌでは、「パーパス!パーパス!ブランドパーパス!ブランドが社会にもたらす価値を再定義!」とどのブランドも言っていたのですが、今はブランドパーパス(ブランドの社会的価値)だけでなく、そのパーパスと社会的責任に基づいて、どのように行動しているのか、世の中をどう良くしているのか、というアクションが注目されています。

このテーマを掲げた2つのセミナーでは、それぞれ2つの食品ブランドが登壇していたのですが、それぞれの活動を味見程度にご紹介します。

 

Knorr(クノール

ユニリーバの食品ブランドであるクノールは、90ヵ国以上で展開し、180年以上の歴史を誇る老舗ブランドです。そんな老舗食品ブランドが情熱を注いで取り組んでいるのは、食を通して環境問題を改善していく、ことです。毎日の食事と環境問題には深いつながりがあること、皆さんご存知でしょうか。世界の食料供給の75%は、たった12種の植物と、5つの動物種から成り立っています。その偏りは環境に大きな影響を与えており、このまま続けていると、2050年、人口が100億人にまで増加する、と言われる頃には、その人口を十分に養う資源がない、と言われています。食物供給の多様化を促進させ、環境改善を促進させるために、クノールはWFF UKと共同で「The Future 50 Foods(未来を支える50の食材)」を発表しました。紹介されている50の食材を日常の食卓に登場させることにより、世界の食料供給システムが持続可能なものになる、と言われています。

 

Danone(ダノン)

ダノンは、今年100周年を迎える食品ブランドです。2017年、ダノンは大胆な行動に出ました。ロゴをリニューアルするとともに、ブランドタグラインを「ONE PLANET.  ONE HEALTH.(1つの地球。1つの健康。)」へと変えました。

「ONE PLANET.  ONE HEALTH.」には、環境と健康は密接につながっており、環境と人々の健康、共に仕える必要がある、という意味が込められています。また、このタイミングで、ダノンのブランドはすべてパーパス・ブランドになることを宣言しました。

パーパス・ブランドとは、ただ商品とサービスを提供するだけではなく、同時に社会問題へ働きかけるブランドのこと。

登壇したダノンのChief Marketing Officerは、ブランドには次の役割があると言っていました。

ブランドは、People powered brands(人々によって、成り立つブランド)であるべきであり、ブランドは、社会的活動を促進するために人々をつなげる役割を持つ。

 

Multisensory Branding(マルチ・センサリー・ブランディング

昨日はVISA、そして、今日はMasterCardと、世界最大手の決済ネットワーク会社が共にカンヌのセミナーテーマに選んだのが、Multi-Sensory Brandingです。

Multi: 複数 / Sensory:感覚・知覚

今年上半期に行われたCES、MWC、SXSWなどのセミナーで、すでに話題になっているのが、ソニックブランディングですね。(ソニックとは、音、という意味。)視覚以外に、人間の持つ他の感覚に働きかけるブランディング、特に聴覚に働きかけるブランディングがなぜ注目されているのか、そこにはいくつかの理由があります。

理由1:スマートスピーカーなど、コネクテッドデバイスの普及

2020年に、IoTデバイスの数は200億になる、と言われています。インターネットにつながっているデバイスが増えれば増えるほど、決済の機会が増える、と思われており、そこに、VISAは大きな可能性を感じています。しかし、全てのデバイスがスクリーンを持つとは限らず、視覚以外でブランドの存在を感じさせるため、マルチセンサリーブランディングが必要となります。

理由2:情報量の増加と人間の注意持続時間の減少

平均1日で人の視界に5000個の広告が投げつけられています。そんな状況下で、人間の注意持続時間は金魚以下(8秒以下)と言われています。人の注意を引くには、視覚的なものではなく、瞬発性のある聴覚的なもの、と考えられます。

 

マスターカードの場合

マスターカードソニック・ブランドについて、実はすでに、今年のMWC、SXSWのセミナーで聞いており、その時のブログにちらっと紹介しているので、ご興味のある方はこちらから。しかし、その時は、今日のセミナーにあったような派手な演出はなかったわ!

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マスターカードセミナーで、マスターカードソニック・ブランドを演奏するLang Lang(ラン・ラン)


今回、カンヌのステージにはプチオーケストラが用意され、マスターカードソニック・ブランドを生演奏。しかも、セミナーの最後には有名ピアニストのラン・ランをステージに招き、彼がアレンジしたマスターカードソニック・ブランドを演奏。この演出には一応理由があり、マスターカードソニックブランディングの特徴である汎用性を紹介しています。次に紹介するVISAはどのマーケットでも使用できる、決まった音を制作したのですが、マスターカードは基盤となるメロディを作り、各マーケット、使用用途によって、そのメロディをアレンジできるようにしているのが特徴です。今後、様々なアレンジをされたマスターカードソニック・ブランドが続々と増える予定です。

 

VISAの場合

マスターカードより早く、独自のソニック・ブランドを世の中に発表したのがVISAです。しかも、聴覚を刺激するソニック・ブランド以外に、同時に視覚と触覚へ働きかけるブランディングも制作し、まさに「複数」の感覚を刺激するブランディングを実現させました。音は短く、ポジティブでありながら、決済が完了したことを知らせるための完結感、を大事に制作。さらに、「決済完了」をビジュアル化したシンプルなアニメーションと、スマートウォッチなどのデバイスにおいて触覚で通知するための振動パターンをデザイン、制作しました。モバイル上の決済だと、音とアニメーション。スマートスピーカー上の決済だと、音だけ。スマートウォッチ上の決済だとアニメーションと振動。などと、デバイス、その人の使っているインターフェースにより、使い分けと組み合わせが自由となっています。その分、制作過程で特に大事にしたのは、この3つの組み合わせのバランスと連動性だったようです。

世の中にあるブランドが、どのような音、触感、味、匂いを持っているのか、考えると少し楽しいですね。