カンヌアワード2019 Day2
カンヌ2日目に行われた授賞式で発表された受賞作品は、クラフトカテゴリーとエンターテインメントカテゴリーです。クラフトカテゴリーには、インダストリークラフト、デジタルクラフト、フィルムクラフトと部門があり、エンターテインメントカテゴリーには、エンターテインメント、エンターテインメントフォーミュージック、エンターテインメントフォースポーツ、とそれぞれ部門があります。(なんかカタカナだらけになりましたね)
映像出身の制作プロデューサーである児玉としては、フィルムクラフト部門はどこか心をくすぶられるので、フィルムクラフト部門でグランプル・ゴールドライオンを受賞した作品をご紹介します!
グランプリ
The New York Times "The Truth is Worth It(真実には、その価値がある)"
審査員長のコメントでは、編集、サウンドデザイン、タイポグラフィ、とすべてが緻密に計算され、クオリティの高い作品に仕上がっている、という理由からグランプリを受賞。危険に晒されても、政府に遮断されても、ニューヨークタイムズ誌は真実を追求し続ける、という姿勢を表現しています。なぜならば、「真実には、その価値がある」から。心拍数が少し上昇させる編集とサウンドデザインが素晴らしいですね。全部で5つのテーマ「ロヒンギャ迫害」「ISIS」「アメリカ移民問題」「トランプ税金問題」「メキシコ政府のメディアコントロール」を題材に制作した動画が受賞。
上記の「ロヒンギャ迫害」tのタイトル和訳はこちら:
ミャンマー、東南アジア | ミャンマー政府は民族浄化を否定|ミャンマーへ報道ビザを申請 | ラカイン州へのアクセスを申請 | アクセス否認|アクセス申請 | アクセス承認 | 条件付きでビザ承認|ビザ:武装警備員に従う | 撮影の制限 | 命令に従う | 政府の用意したツアーに従う | 政府の用意したツアーは主要現場を避ける | 破壊されたモスクを避ける | 焼かれた村を避ける | ドライバーは質問を避ける | ドライバーは政府の話を復唱する | 政府の用意した収容所に到着する | 収容所に留置されたロヒンギャ | ロヒンギャに話す | 立ち去るよう、言われる | 次へ行くよう | ツアーを続けるよう | 証拠を通り過ぎるよう | 停車してもらうよう、ドライバーにお願いする | ドライバーは無視する | 仮病を装う。ドライバーが車を停める ~ 村へ忍び込む | 村人は政府の話を復唱する | 村にいる子供たちを発見する | 子供たちは話す | 子供たちは政府の話を覆す | 子供たちは無濾過 | 子供たちは焼かれた家たちの話をする | 行方不明者の話をする| 殺人の話をする | 放火の話 | レイプの話 | 行方不明の友人の話 | 行方不明の人々 | 消された少数派ムスリム | 記述が嘘を暴く | 政府の嘘 | 公式な政府の話は偽り| 公式な話が解きほぐされ始める
<ヘッドライン>
ただし、その表明にたくさんのヒビ割れ
真実は自ら報じない
真実は決意を要する
真実にはその価値がある
ゴールド
<ディレクション(演出)部門>
Nordstrom "An Open Mind is the Best Look (オープンな心が一番おしゃれ)"
Nordstrom(ノードストローム)はアメリカベースの高級百貨店です。ノードストロームが提供するどのファッションよりも、「オープンな心を持つことが一番おしゃれ」「多様性」をテーマにしたブランド広告です。
<スクリプト(脚本)部門>
NIKE "Dream Crazy(クレイジーな夢を追いかけろ)"
カンヌ1日目の授賞式で発表されたアウトドア部門でグランプリを受賞したNIKE "Dream Crazy"のキャンペーン動画がフィルムクラフト部門ではスクリプト(コピー)でゴールドライオンを受賞。コピーを読んでいるのは、プリント広告に登場しているコリン・キャパニック選手。
コピー和訳:
あなたが持つ夢はクレイジー、と言われたら。あなたができる、と思っていることを笑われたら。それは良いこと。そのまま突き進め。なぜなら、信じることのできない者たちは、「クレイジーな夢」とは、侮辱する言葉ではない、ということを理解できていないだけだから。それ(クレイジーと言われること)は、褒め言葉である。学校で足の速さNo. 1を目指すな。世界No.1でもない。史上No.1になれ。OBJの背番号を着る自分を思い描くのではない。OBJが君の背番号を着るのを思い描け。(OBJ= Odell Beckham Jr. という有名なアメフト選手)ミスコン優勝で満足するな。もしくはラインバッカーでも。両方手に入れろ。55キロ減量し、アイアンマンに挑戦しろ。脳腫瘍に打ち勝った後に。世の中に影響を与えるために、誰かと同じように振る舞う必要がある、なんて考えるな。難民として生まれても、それを理由にサッカーで国を代表する夢をあきらめるな。16歳で。世界一のバスケ選手で止まるな。バスケ以上のことをやれ。すべてを犠牲にしてでも、何かを信じろ。競技で歴代最高チームを語られるとき、そのチームが自分のチームであるようにしろ。腕が1本しかなくても、アメフトを観戦するだけではない。参加しろ。世界最高のレベルで。コンプトン出身(カリフォルニアの貧困地区)の女の子だったら、ただテニス選手になるのではない。史上最高のアスリートになれ。自分の夢がクレイジーなのか、と問うのではない。十分クレイジーなのか、と問え。クレイジーなのは、それが実現できるまで。Just do it.
<アニメーション部門>
Mondelez International "Dark Chocolate Humor(ダーク・チョコレート・ユーモア)"
チョコレートの世界が実にキュート!なのに、ストーリーがちょびっとダーク。その絶妙なバランスがなんか、良いですね。ミニオンズをチョコレートにしたみたいな愛らしさです。
<アニメーション部門>
Apple "Share Your Gifts(あなたの持つ才能を共有しよう)"
すごくクリエイティビティ溢れるのに、自信がないがゆえに、アイデアは誰にも見せず、箱の中に閉まっている、というシャイな女の子の物語。GIFTには、ダブルな意味があり、そのまま「ギフト」、そして「才能」という意味が含まれています。ホリデイシーズンにぴったりのほっこりムービーです。
<シネマとグラフィー(撮影)部門>
The Blaze "Queens"
The Blazeというパリの音楽デュオのミュージックビデオです。2年前、このコンビのミュージックビデオがグランプリを受賞しましたね。
<キャスティング部門>
Apple "Apple at Work - The Underdogs(アップルフル稼働 - 噛ませ犬たち)"
会社のお偉いさんにコーヒーをシャツにこぼされたことから、物語が始まる。こぼされた代償として、その人へ提案する時間を獲得した冴えない女性社員とその仲間たち。四角ではなく、丸いピザボックスの提案準備に追われる「噛ませ犬たち」の絶妙なキャスティングが評価され、ゴールドライオンを受賞。
やっぱり映像って、いいですね。