カンヌセミナー2019 Day5
カンヌ5日目!&最終日!そろそろ、日本に帰国したら何を食べようかなー、と瞑想しはじめている児玉です。白金にあるお蕎麦屋さん夢保の天ざる、づけ鮪の山かけと瓶ビールですかね。
そんなことはさておき、最終日は基本的に毎年、会場から人が少なくなります。カンヌを満喫できなかった人たちが最後に駆け込み寺ってるのでしょうか。そんな中、今年マーケター・オブ・ザ・イヤーを受賞したアップルのセミナーが最終日であったにも関わらず、大盛況!そのセミナーを少しご紹介。
APPLE(アップル)
アップルのセミナーの題名は「Simple is Hard(シンプルは難しい)」。この言葉は創業者のSteve JobsとChief Design OfficerのJonathan Iveが口にした言葉であり、アップルの文化に根付いている言葉です。
アップルが大事している3つのブランドコアとは、
- SIMPLICITY
- CREATIVITY
- HUMANITY
SIMPLICITY
どのプロダクトも美しくシンプルなAppleの商品は、どれもカルチャーにインパクトを与えている。その理由として、登壇したアップルのTor Myhrenm(トア・ミレン)は以下のように述べていました。
A simple product combined with creativity becomes iconic.
シンプルなプロダクトにクリエイティビティを組み合わせると、それは時代のアイコンとなる。
トア・ミレン(Vice President of Marketing Communications)
例えば、私が学生時代、衝撃を受け、憧れを覚えた初代iPodの広告。商品はすごくシンプルなデザインなのに、広告がずば抜けてかっこいい。
15年後でも色褪せない上記の広告ですが、AirPodが発表された2年前、その時のクリエイティブを今の時代へ作り変えた動画もセミナー中に紹介されました。
シンプルさは、商品にだけでなく、それはマーケティングにもつながっています。研ぎ澄まし、研ぎ澄まし、本当に重要なことだけをメッセージとして残す、という手法を取っています。
CREATIVITY
クリエイティブ業界のためにプロダクトを作っているので、広告はもちろんクリエイティブである必要がある
アップルはクリエイティビティにストイック、というのはわかるのですが、コミュニケーションに対して、2つの特徴があります。
<広告は一切調査にかけない>
ブランドがどういったものか、誰よりも理解している自信があり、自分たちの持っているクリエイティブ本能を信頼している。
<エージェンシーは多数ではなく、1社>
アップル内にあるインハウス・エージェンシー以外で、ここ20年間、唯一協働している外部エージェンシーは1社、TBWA\Media Arts Labだそうです。(ローカル地域を除く)全てをインハウスにするのではなく、外部エージェンシーとパートナーシップを結ぶ理由としては、客観性。インハウスとTBWA\Media Arts Labには程よいライバル関係が存在し、具合が良いらしいです。
広告よりもプラットフォーム
現在、キャンペーンに注目するほどの忍耐と注意力が世間から欠けており、大々的なキャンペーンが通じる世の中でなくなっている、とトアさんは説明していました。そこで、アップルが大事にしている考えとは、広告よりもプラットフォームです。単発的な広告よりも、大きなアイデアを長期に渡って、様々な形態、多種多様な場面を使って、伝えて続けられるプラットフォームのこと。
#ShotoniPhone(iPhoneで撮影)
#ShotoniPhoneはキャンペーンではなく、どの媒体でも美しく姿を変え、iPhoneのカメラの性能と、クリエイティブを推進するアップルの考えを伝えるプラットフォームと言えます。
2015年カンヌライオンズのアウトドア部門でグランプルを受賞した「iPhone6 World Gallery」という施策では、25ヵ国、73都市、1万箇所以上で、iPhoneで撮影された写真を"Shot on iPhone6"というコピーのみで公開されました。
また、「iPhone6 World Gallery」のような大きなスケールだけでなく、#ShotoniPhoneはソーシャルメディアでも使用されています。しかも、その使い方がアップルらしく潔い。アップルのインスタブラムアカウントは、すべてが#ShotoniPhoneに捧げており、それ以外のコンテンツを掲載していないのです。
#ShotoniPhoneという大きなプラットフォームがあると、適応能力が半端ないですね。
そして、#ShotoniPhoneに続く、プラットフォームとして紹介されたのが 、去年発表されたBehind the Macというもの。今年のフィルム部門でゴールドライオンを受賞しています。
スティーブ・ジョブズの名言である、「情熱のある人は、世界を変える力を持っている」を体現している動画です。すごくシンプルな動画なのですが、音楽の選曲、署名人の実際の写真を使用している、という点で伝わる説得力。「情熱のある人」「世界を変えている人」の側にあるのはMacであり、そんな人たちをアップルは応援します、というのが伝わってきます。今後このBehind the Macというプラットフォームでの様々な展開が期待されます。
20年以上前に公開されたアップルのThink Differentの広告とメッセージは同じですが、現代版にリニューアルされた感覚でしょうか。本当にブレない、というのがアップルの強みですね。
Steve Jobs(スティーブ・ジョブス)はこの広告について、以下のように述べたようです。
登場している人の中で、すでにこの世にいない人たちもいるが、この世にいたら、彼らはMacを使うだろう。
Behind the Macの動画を見ると、「スティーブさん、確かにそうかもしれませんね」と言いたくなります。
セミナーの最後を締めた言葉とは、
Creative people will change the world, and we will continue making products for these people.
クリエイティブな人は世界を変える。そして、私たちはこの人たちのために商品を作り続ける。
iPhone vs Androidの話題が上がると、「機能的にAndroidの方が圧倒的に優れているのに、アップルに騙されているだけだよ!」とアップル信者はバカにされがちですが...このセミナーを聞いて、スーッとした、というか、ブランドのパワーとブランドを表現するクリエイティブの力って、すごいな、と最終日にして、再認識するきっかけとなりました。
では、オールヴワール&アビエント!