カンヌ6日目!P&Gのセミナーのご紹介を。
毎年、P&Gの顔と言っても良い、Chief Brand Officerのマーク・プリチャードが1人でステージに立ち、ここ1年のP&Gの作品を絡めて、クリエイティビティの大切さ、を語る、というのが定番ですが、今年は打って変わって、3名の女性を引き連れてのパネルディスカッションを遂行。
セミナーの題名は
Creativity and Responsibility: Using Our Voices to Promote Gender Equality
クリエイティビティと責任感:我々の声を使って男女平等を訴える
女性たちは業界でも超有名、ティナ・ブラン(ジャーナリスト/編集長)、マドンナ・バッジャー(Badger & Winters CCO)、シェリル・サンドバーグ( Facebook CCO/著者)の3名でした。
世界トップの広告主であるP&Gがカンヌの枠でジェンダーの話をする、というのは、今年のカンヌをうまく物語っています。というのも、今年はなんとも言っても「Social Cause(社会問題解決)」の年であり、その中でも最も話題となっているのがGender Equality(男女平等)。数あるセミナーの内容だけでなく、受賞している作品でも、ジェンダーの話題が色濃く出ていました。
もともと、カンヌの枠でジェンダーをトピックにパネルディスカッションする、という内容にP&Gの中でも反対の声があったらしく、その声の内容とは「すでにもう何度も話されているから」。しかし、それでも課題として残っている、まだまだ努力が足りない、ということで今回のセミナーに至っています。
「まだまだ努力が足りない」を表現する統計集
・テレビコマーシャルの28%で女性をモノとして表現したり、ステレオタイプにはめ込んだり、マイナスなイメージで表現している
・過去10年間のカンヌ受賞作品を見ると、広告の中でも、女性より男性の方が7倍発言しており、女性より男性が登場するのが4倍多く、働いている役の全体75%が男性だった
・広告業界でクリエイティブ職についている女性は全体の27%
・広告業界でChief Marketing Officer、Chief Creative Officerという役職についている女性は全体の11%
・広告業界でコマーシャルディレクターである女性は全体の9%
・業界関係なく、すべてを見たとき、C-Suiteにいる女性の割合は2割以下
・同じ仕事をしていても、女性は男性に比べて20%低い給料をもらっている
男女平等について、いっぱい話されていても、アクションへつながっていない!
by Marc Pritchard
Women Not Objects(モノではなく女性)という団体を立ち上げているマドンナ・バッジャーは広告で見られる女性のマイナスイメージをなくそうとしている。去年のカンヌでも見せた動画をご紹介。
マドンナ曰く、3つのPを気をつけろ!
◼︎Prop(小道具):モノと変えても違和感ない女性の使い方
womennotobjects.comより
◼︎Plastic(プラスティック):過剰にリタッチされた女性
womennotobjects.comより
◼︎Parts(パーツ):商品を売るために、女性を人ではなく、体のパーツだけとして使う
womennotobjects.comより
「ジャーナリズムでも女性差別が行なわれている」と紹介するのは、ジャーナリストであるティナ・ブラウン。
紹介したのが、Daily Mailというタブロイド誌の表紙。写っているのは、スコットランド自治政府首相のニコラ・スタージョンとイギリス首相のテリーザ・メイ。見出しに書かれているのは、「ブレグジットはどうだっていい!どっちの方が脚がきれい?」
Daily Mailより
こういった広告、ニュース、メディアでの女性の取り上げ方の影響は大きく、メディアに関わる人は全員、その責任感を持つ必要がある。
Facebookのシェリル・サンドバーグが会場をハッとさせた発言をご紹介。
「ハキハキしている幼い女の子は"威張っている"のではない、"経営のリーダーシップスキル"が備わっている、と言ってあげて」
この発言に会場は笑いに包まれた。しかし、その発言を男の子に置き換えて、再び言った時、会場はシーン。なぜなら、幼い女の子=経営リーダーという”不釣り合い”がユーモアにつながり、笑いが起こった、とシェリルは説明。それほど、この男女平等という問題は根深い。さらに会場はシーーーーン。
最後にP&Gのお話も少し。
P&Gの洗剤ブランドであるARIELがインドで行ったDads Share the Load(父親も家事をしよう)キャンペーンは去年、多数のカンヌライオンズを受賞し、今年のクリエイティブ・エフェクティブネス部門でもゴールドを受賞している。
文化的に男性が家事をやる、というのが稀なインド。しかし、男性も家事をしよう!と促進しているキャンペーンです。フィルムでは、仕事と家事を両立して忙しそうにしている娘の姿を見て、家事をするのは女性だけの仕事ではない、という環境に育ててあげられなかったことを反省する父親の話を伝えています。
今後、P&Gでは、家事をする男性にスポットライトを当てるのではなく、男女関係なく、男性が当たり前のように家事をする姿を表現していく、という。
セミナーは、P&Gの#WeSeeEqualのキャンペーンムービーで終わりましたー。