GLOBAL CREATIVE TRIP

世界各国を旅しながら働く児玉が、海外のクリエイティブトレンドをいちはやくレポートします。

BLACK LIVES MATTER 海外広告事例

いつの間にか6月になり、もうすぐで1年の折り返し地点に差しかかろうとしています。前回のブログ記事から2週間が経ち、予告として「こんな時だからこそ、クスッ、ニヤッ、ワハハを提供している海外広告をご紹介しようと思います!」と締めくくってから、海外事情に大きな変化が...。

BLACK LIVES MATTER

各メディアが今報じているのは新型コロナウイルスではなく、5月末に起こったジョージ・フロイド殺害事件を引き金に加熱しているブラック・ライブズ・マター運動と、日々行われているデモについて。特に新しくもない人種差別問題。新しくないことに問題があります。BLACK LIVES MATTERが生まれたのは2013年で、もうすでに7年前。ジョージ・フロイドと同じように、トレイボン・マーティンという黒人少年が白人警官に殺害されたにも関わらず、警官に無罪判決が下された時に始まりました。同じような事件が毎年毎年繰り返され、デモがあっても何も改善されず...。ただ、今年はどこか違う、何かが変わろうとしている、と思う私は楽観的すぎるのでしょうか。

やっと、多くの命が失われたのち、アメリカはBLACK LIVES MATTERの意味と緊急性を理解し始めてきていて、今、沸点に到達した。

アリシア・ガーザ BLACK LIVES MATTER 共同設立者

今回は何か様子が違うと思うのは、デモ運動の大きな広がりと、多くの有名人やブランドが積極的に声をあげているのを見て。多くの消費者やファンは、影響力を持つブランドやセレブリティは、各々持つプラットフォームを使って、この運動をサポートすべき、と信じている。

 

6月頭に行われたエーデルマンにの調査によると...

56% ブランドは人種差別に対して道徳的な立場をとる社会的義務がある

60% ブランドは人種差別の根本的な問題を解決するために投資すべき

57% ブランドは人種差別について社会を教育すべき

60% ブランドの人種差別に対する対応を見て、購入するかボイコットするか、判断する

 

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YouTubeよりスクリーンキャプチャ

非常に敏感なトピックについて、各ブランドはどのような取り組みをしたのか。この2週間、賞賛を浴びたブランド、火傷を負ったブランド、ともにご紹介します。

PROCTER & GAMBLE | The Choice(選択)

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昨日公開されたP&Gからの動画は、黒人と白人の肌のイメージを背景に、黒人であること、白人であること、その不平等さ、どう活動すべきか、を主張するコピーで構成されているものとなります。P&Gは、2006年にMy Black is Beautiful(私の黒は美しい)というプラットフォームを作り、黒人女性、黒人コミュニティのエンパワーメント活動を進め、そこから派生し、2017年に"The Talk"、2019年に"The Look"と定期的に人種差別をトピックにパワフルな動画を制作し、この問題に立ち向かってきました。そのため、今回の動画はシンプルでありながら、メッセージとトーンを的中させています。

コピー>どこに行けば良いの?私たちの命は大事ではない、と繰り返し見せつけられたならば、私たちはどう反応すれば良いの?アメリカに住む白人とは、自分の命は大事である、とわざわざ主張する必要がない、ということ。自分の命は大事であること、それはパワーである。そのパワーを使うのは、今だ。人種差別主義者ではない、ことだけでは足りない。今、反人種差別主義者であるべきだ。 言葉と気持ちだけでは足りない。今、活動を起こすときだ。読む。聞く。寄付する。計画する。行進する。投票する。発言する。参加する。自分の持つパワーをどう使うかは選択である。観察するよりも活動を選択せよ。完全よりも進歩を選択せよ。

 

個人的にすごくパワフルで、好きなのでP&G The Talkもご紹介。2018年のカンヌライオンズのフィルム部門でグランプリを受賞した作品となります。今の情勢を見て、再度P&GがYouTubeにアップロードしていました。

www.youtube.com

The Talkとは、英語で「会話」という意味ですが、アメリカの黒人家庭では子供に人種差別について説明、話す会話のこと。

コピー>(母1)誰に言われたの?(娘)お店のおばさん。(母1)それは褒め言葉じゃないのよ。(母2)それは汚く、醜い言葉だけど、今後もそう呼ばれることは あるわ。お母さんには、どうしようもないことなの。でもその言葉によって傷ついてはいけないわ。(母3)身分証明書、持った?職質されたときにね...。(母4)もし、停められたら...。(娘)お母さん、大丈夫よ。私、運転うまいから。(母4)これは交通違反の話じゃないの。これは、無事に家に戻ってこれるかどうかの話。(娘)大丈夫よ...ね?(母1)あなたは「黒人にしては可愛い子」じゃないの。あなたは美しい。それだけ。わかった?覚えておきない。The Talkについて、みんなで会話をしよう。その会話をする必要がなくすためにも。

 

 

NIKE | For once, Don't Do It(今回だけ、やってはいけない)

www.youtube.com

2018年、ナイキのタグライン「Just Do It.」の生誕30周年を記念したDream Crazyキャンペーンですでに人種差別問題を取り上げていたナイキは、ジョージ・フロイド事件が起こったその週末、どのブランドよりも早く動画という形で声明を発表。象徴的な「Just Do It(ただ、やるのみ)」を逆手に「For once, Don't Do It(今回だけ、やってはいけない)」というフレーズを元にコピーのみで構成された動画は、改善するために、人々がやってはいけない行動を語っている。人種問題について、すでに強いスタンスを見せているナイキだからこそ、すぐに行動することができ、世の中からも受け入れられました。

コピー>今回だけ、やってはいけない。アメリカに問題が存在しないふりをしてはいけない。人種差別に背中を向けてはいけない。罪のない人たちの命が奪われていることを受け入れてはいけない。これ以上、言い訳をしてはいけない。自分には関係ない、と考えてはいけない。腰をかけて、静かにしていてはいけない。自分は変化を導く一員になれない、と思ってはいけない。みんなで変化を導こう。

 

 

McDonald's | One of Us(私たちの一員)

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ナイキと同じようにコピーだけで構成されているマクドナルドの動画では、人種差別が原因で命を失った人たちを冒頭に紹介。この人たちは他人ではなく、私たちの一員であり、お客様、従業員、フランチャイズメンバーの1人でもおかしくなく、決して他人事ではない、と語り、最後に寄付活動と人種差別への反対姿勢を表明しています。こちらの動画には結構、辛口な意見が寄せられています。例えば、最初に7名の被害者を紹介しているが、7名以上に数多くの被害者がいることが問題であることをまるで理解していない気がする、とか。寄付活動をする、と言っても、実際いくら寄付するのかは言っていなく、コミットしている姿勢が見られない、とか。極め付けは、最低賃金引き上げに長年抵抗していたのにも関わらず、その結果となる構造的人種差別を取り除くべきだ、と表明しているところに、炎上ポイントがあったり...。ただ言葉を発するのではなく、活動や組織のあり方自体がその言葉を裏付けるものでないと、厳しい目を向けられる時代です。

コピー>彼は私たちの一員だった。彼女は私たちの一員だった。彼らはみんな、私たちの一員だった。私たちのお客様たちの中に彼らを見ることができる。私たちのクルーメンバーの中に彼らを見ることができる。私たちのフランチャイズオーナーたちの中に彼らを見ることができる。そのため、マクドナルドファミリー全体が悲しんでいる。だから、彼らのために、そして構造的人種差別や暴力の他の被害者たちをサポートする。今日、アメリカ全土の黒人コミュニティとともに立ち向かいます。よって、私たちは全米年連盟と全米黒人地位向上協会へ寄付します。私たちは、不公正、不公平、差別は許しません。Black lives matter.

 

その他、動画じゃなくとも、ソーシャルメディアのスレッドを見ると、多くのブランドがBlack Lives Matterのサポートを表明しています。ただし、コメント欄を見ると、「どうサポートしているの?」「白人役員と黒人役員の割合を教えて」「寄付したの?いくら?」等、するどい指摘が目立ちます。

 

これらの流れを見て、思い浮かぶ英語のフレーズで、今回はお別れです。

If you want to talk the talk, you need to walk the walk.

直訳>話を話したいなら、歩行を歩かなければならない。

口先だけではなく、実行が大事である。