CES2020 パーソナライゼーション時代の中での価値創造:ロレアル篇
アメリカのラスベガスにて、CES2日目を迎えている児玉です。
CESといえば、テレビ、その他家電、そして車、と思われがちですが、その考えは古い!そう思い知らせてくれたのが7年前、大手ビューティ会社として初のCES参戦を果たしたロレアルですね。ビューティテックの先駆者と言われるロレアルは、もう今年でCES7年目。そして、ここ数年、その後を追うかのように多くのスタートアップから大手まで、ビューティテックのカテゴリーに参入するようになりました。
今年も参加しているロレアルは、いくつかの商品を発表しています。そして、その一番の目玉はPERSO(パーソ)。あれ、ちょっと名前がダサいですね...。それはさておき、簡単な説明ビデオをご紹介。
アプリと連動したスキンケアとメイクアップを調合してくれるデバイスとなります。自分の肌状況に合わせて、スキンケアを調合してくれるデバイスはここ数年でいくつもすでに発表されていますが、PERSOの優れている特徴としては、同じデバイスで自分にあったファンデーション、お好みのリップまでも調合できること。
動画を見ると、使用するためのステップは簡単そうに見えます。その簡単さゆえに、それを支える無数のテクノロジーを忘れてしまいますね。
主な使用方法
① ロレアルの代表的ビューティテックでもあるMakeup Geniusで使われている顔認証テクノロジーとAIを使って肌を分析
② 肌データと持っている肌悩み、外的環境のデータ(湿度、大気、紫外線など)を組み合わせて分析
③ デバイスに内臓されている3つのカートレッジから、あなたにぴったりの剤を調合
さらにファンデーションでは
顔の輪郭、凹凸に合わせてファンデーションの調合も!
さらにさらにリップでは
スマホのAR機能でまず擬似的にテストしたリップの色の調合も!
お気に入りのドレスと同じ色にしてみたいと思ったら、その色を認識させての調合も!
最新のトレンド色を取り入れたいと思ったら、インスタからの画像を認識して調合も!
PERSOは、ロレアルの代表的スキンケアブランドとのパートナーシップを通じて、2021年に発売予定です。
PERSOの発表とともに、VALUE CREATION IN THE AGE OF PERSONALIZATION(パーソナライゼーション時代の中での価値創造)というトピックで、ロレアルのテクノロジーインキュベーター(ロレアルの中にあるスタートアップのようなもの)の主任であるGuive Balooch氏(ギーヴ・バルーシ)のセミナーがありましたので、その内容もあわせて少しご紹介します。
皆さんもご存知の通り、AIが普及する中でパーソナライゼーションは当たり前の時代となっております。昨日のブログでもCONNECTED INTELLIGENCEというフレーズをご紹介させていただきましたが、今の時代、デバイスがネットにつながる、AI搭載、というのは当たり前になってきています。では、その上にどのような価値を加えられるのでしょうか。
ギーヴ氏は、テクノロジー×ビューティの旅を8年前に開始したとき、特にビューティのカテゴリーではパーソナライゼーションの持つ価値は凄まじい、ということに気が付いた、とのことです。ただ、当初行なっていたパーソナライゼーションとは、肌の分析、似合うメイクのアドバイスなど、あくまでも情報提供にしかすぎなかった、と言っています。そこで、彼は気がついたそうです、
パーソナライゼーションとは、一人一人のお客様の肌状況を的確に診断するとともに、その同じ的確さでその肌に合う調合を提供できたとき、初めてパーソナライゼーションと呼べる。
これに気がついた時、ロレアルの今後のビューティテック事業を左右するのはパーソナラーゼーションであり、ブランド価値である「Beauty for all(すべての人は美を)」 を体現するための鍵である、と確信したそうです。
ロレアルのテクノロジーインキュベーターが持つスキンケアへのビジョンとは、完璧なスキンケア商品を作ることではなく、お客様にご自身の肌への理解を深めてもらい、変化していく肌状況に応じて、変化していくスキンケアを提供できるシステムの構築、だそうです。いろんなスキンケアを試してみて、肌に合わないものは捨てては次を購入、という時代をなくしたい、とのことです。
様々なプロジェクトの依頼のあるギーヴさんですが、プロジェクトの選別で大事にしていることとは、
テクノロジーがないと、本当に解決ができない問題なのかどうか。
そして同じように、パーソナライゼーションが必要のない商品と、必要のある商品なのかどうか、という選別をしているようです。
例えば、ヘアカラーリング剤という商品にはパーソナライゼーションが必要と考え、去年Color&Coというパーソナライズされたヘアカラーブランドを発表しました。
ファンデーションと同じで、人によって、髪の毛の色や質感は多種多様。また、カラーリングの歴史も、一度も髪を染めたことがない人から若気のいたりで金髪にしてみた人まで、さまざまです。なので、このカテゴリーにはパーソナライゼーションが必要と考えたようです。
使用の流れ
① ビデオ電話を通じてプロのヘアカラリストと1対1の相談
② あなたにあったカラー剤を調合
③ あなたのためのヘアカラーパッケージが届く
④ あなたのためのHow-to動画を視聴しながらカラーリング開始
DIYヘアカラーカテゴリーにしては、魅力的な付加価値であるプロのヘアカラリストとパーソナライゼーションが魅力的な商品となります。定期購入にすれば、価格は19.90ドルから。そんなに高くない!けど、定期購入を促すのはニクい!あともう少し払えばプロに染めてもらえるのでは...?
今後、ロレアルのテクノロジーインキュベーターが注目している3つのこと
INCLUSIVITY(包括性)
誰にでも、どこにでも、その人に適切な商品を提供できるようになること。
PRECISION DEVICES & EXPERIENCES(精密なデバイスと体験の提供)
ここ5〜10年の間で、複雑すぎてビューティカテゴリーでは困難と思われていたことがスマートツールで実現できる、と予想していました。
SUSTAINABILITY(サステナビリティ)
世の中をよくするためのテクノロジーの開発を進めていきたい、とのこと。より少ない水を使う商品の開発など、「実はまだ研究を始めたばかり」と正直に告白しながら、今後の意欲を語っていました。
今、CESではパーソナルケアがアツイ。P&Gも去年から参戦しており、今年も面白い商品の発表とともに、参戦しております。明日はそんなP&Gのお話を〜!