GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

SXSW2019 老舗リテーラーの進化:ウォルマート篇

「打倒アマゾン」とメラメラと闘志を燃やしているのは世界最大手のスーパーマーケットチェーンのウォルマートです。ウォルマートの企業宣言は、Save Money.  Live Better(お金を節約。より良い生活を。)です。昔からウォルマートを知っている人だと思い浮かぶのは、どでかい店舗に乱雑と置かれた品物たち。「安さを重視するには、こんなものか」と思ってしまう、なんとも言えない虚しい買い物体験です。

f:id:bbmedia:20190312021552j:plain

前列の男性の頭から中々逃れられず...

そんなウォルマートのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)が登壇していたShaping the Future of Shopping(未来の買い物を形成)というセミナーは見事に満席!ガタイの良い大きな白人男性2人に挟まれて受けたセミナーの内容とは、Walmart Labsが取り組んでいるウォルマートの生産性向上と、顧客体験の向上のために使用しているテクノロジーの紹介です。

 

VRを使っての従業員研修

ただの研修に比べ、学習が早く、記憶に残る、という意味で従業員からもポジティブなフィードバックがあるのだとか。

 

ロボットを使ったピッキング作業

実際の店舗ではなく、オンライン購入が増え始めている中、商品のピッキング作業という単調な作業を人ではなく、Alphabot(アルファボット)というロボットに任せて、オートメーション化を図っています。ピッキング作業の自動化はライバルのアマゾンや他のEコマースもやっていることで、決して新しいことではないです。ただ、このアルファボットの導入とともに試験的に行なっているのが、店舗に連接してマイクロ倉庫を併設させる、ということ。そのマイクロ倉庫の併設が今後のビジネスに大きなベネフィットがある、とフォーブス誌でも書かれていました。

各店舗にマイクロ倉庫を設けることによって、オンライン取引をより早く、より効率よく完結することを可能にします。オンライン注文/発送だけでなく、ウォルマートの人気サービスの1つである「Curbside Pickup(カーブサイド・ピックアップ)」と言って、オンラインで予約した後、店舗に入らず店舗脇に車をつけるだけでウォルマート従業員がトランクに注文商品を運んでくれる、というサービスの効率もあげていきます。

 

ロボットを使った棚確認作業

アルファボットは倉庫で働くロボットですが、こちらのロボットは店頭の列で働くロボットくんです。このロボットは店内を1日3回巡回し、棚をスキャンしながら、補充状況、価格とラベルのチェックをします。小さな店舗であれば、ロボットの必要もないかもしれないのですが、ウォルマートはなん言ってもどデカいんです。今まで人が巡回していたのをロボットで効率化しています。

 

f:id:bbmedia:20190312070959j:plain

セミナーにもロボット登場!それぞれ名前があり、写真中央にいるのがオスカー君です

上記の2つのロボット例を見て、「うわっ。ロボットがついに人間の職を乗っ取っている」と思うかもしれませんが、ウォルマート曰く、これらロボット導入によっての社員削減は一切行なっていなく、その予定もない、とのことです。単調で、予測可能な作業はロボットでオートメーションを図り、それによって手が空いた従業員はお客様へのサービスへと励む、という構造にしているそうです。

 

テキストベースのコンシェルジュサービス

マンハッタンで試験的に開始しているウォルマートの新しいサービスは月50ドルで受けられるテキストベースのコンシェルジュサービスです。誰かの引っ越し祝い、誕生日プレゼントを購入したいけど、時間がない!という忙しいマンハッタン人に向けたサービスです。テキストで欲しいものを伝え、オプションを見て注文。その日のうちに、ギフトラッピングされた状態で家に届けてくれる、というものです。商品はウォルマート上の商品だけではなく、Saks Fifth AvenueやSephoraなど、人にギフトしても恥ずかしくないリテーラーとの提携を実現しています。低価格を売りにしていたウォルマートがハイエンドコンシューマーベースとのつながりを作るために開始したサービスですが、マンハッタンでバリバリ働いている人たちがもともと持つウォルマートのチープな印象を乗り越えてこのサービスを使うかどうか...。なぞですね...。