GLOBAL CREATIVE TRIP

海外のブランド事例やクリエイティブトレンドをいちはやくレポート

SXSW ラグジュアリーブランドの未来

今の消費者、特に今後の主要購買層として期待されているミレニアル世代はモノの所有より、経験と体験に価値を置いている、というのが話題によくあがります。

 

そんな中、高価なモノを提供しているラグジュアリーブランドはどう変化していくのか。その話題にスポットライトを当てた「The Future of Luxury(ラグジュアリーの未来)」というセミナーに参加してきました。

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参加していた企業は、Jaguar Land Roverというイギリスの自動車会社と、DIAGEOというイギリスの酒造メーカーです。

 

この2つの企業は、体験重視の時代の中で、ラグジュアリーをどう考えているのか。

 

少し前まで、ラグジュアリーブランドはステータスを証明するために利用されていました。良い時計、良い車を所有し、品質が高く、高価なお酒を飲むことによって、社会での自分のステータスを示していました。そのステータスの示し方が変化してきています。

 

今、ステータスの考え方として、

持っているモノではなく、自分がどういう人間でどういう生活を送っているか

へシフトしている、とDIAGEOのCMOが語っていました。

 

今は、健康的なライフスタイル、社会貢献、道徳意識でステータスを図るのがトレンドとなっています。

 

ということで、DIAGEOでは、そのモノ自体ではなく、そのモノによって感じとれるムード、世界観を提供するのに力を入れています。

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Zacapa Facebookぺージ より

 

例えば、DIAGEOのブランドであるZacapaは、2300メートルの場所で製造されている高級ラム酒なのですが、標高の高い地域で酒造しているため、熟成するのに時間がかかるのだとか。その「時間」というのを使い、スロー=優雅で価値あるもの、というブランディングをしています。「The Art of Slow」という世界観を作り、スローフードを提供するミシュラン三ツ星レストランとキャンペーンを行ったりしています。

 

このようにブランドの世界観を体験してもらうことが大切になっている中、Brand PurposeとBrand Promiseの明確化が必要だと、おっしゃっていました。

 

DIAGEOでは、ブランドで2つのことを大切にしています。

1. Brand Purpose:ブランドの存在意義がすべての行動と言動のコアにある

2. Visual Identity:ブランドにまつわるすべてのビジュアルの統一

 

 

商品・モノを提供するブランドでありながら、DIAGEOもJaguar Land Roverも、ブランドを体感してもらうため、パーソナラライズされた「体験」というものを提供しはじめています。

 

DIAGEOは、Amazon Alexa Skillsを使って、Johnnie Walkerのテイスティングツアーやカクテルのレシピを提供しています。また、Cocktail Courierといって、飲みたいカクテルの材料を届けるサービスも開始しています。

<Cocktail Courier>

 

Johnnie Walkerのテイスティングツアー体験は、今までは酒造所に出向き、限られた人しか体験できなかったのを、誰でも(Alexaを持っている人)パーソナライズされたツアーを体験することができるようになっています。

 

Jaguar Land Roverは、去年オープンしたばかりのテクニカルセンターにお客様を招き、デザイナーとエンジニアに直接会い、自分の車を思うようにカスタマイズできる体験をこれから提供する、と発表しています。その訪問の際、ミシュランの星を獲得している有名シェフがお客様、もしくはお客様が購入しようとしている車にちなんだ料理を調理して提供する、という徹底したラグジュアリーサービスです。

<Jaguar Land Rover テクニカルセンター>

 

で、結局、今後、ラグジュアリーブランドの未来とは?

 

Exclusivity(排他性)ではなく、Quality

 

最も優れたテクノロジー、デザイン、クオリティを提供するのが、これからのラグジュアリーの新しいスタンダードとなる、と登壇者は語っていました。

ラグジュアリーブランドに限らず、消費者の目利きがより優れてきており、モノ・ブランドの本質が問われる時代へとなってきている、ということですね。